見出し画像

愛にあふれる畳職人は推し「いぐさ」を売るよりもお客様の要望に応えたい

こんにちは!商工振興課の大澤です。
今回も市内企業を紹介します!

畳って個性があるのをご存じでしたか。
部屋のサイズに合わせてぴったり作っているので、一つ一つ違うんです。
部屋の中でパズルのようになっていて、こっちの畳とあっちの畳を入れ替えようと思っても入れ替えられないんですって!

そんな個性ある畳を自在に作ってしまうのが
畳職人さん
今回取材させていただいたのは、
有限会社 石井畳工業いしいたたみこうぎょう

代表取締役の石井 淳一いしい じゅんいちさんです。

代表取締役の石井淳一さん

畳屋だからこそできるオーダーメイド

石井さんはお客様のニーズに合った畳をオーダーメイドで作っています。

お客さんの中には、
玄関に畳を作ってほしいというユニークなオーダーもあったとか!!

玄関に畳なんて「おっしゃれ~!」と大澤は思ったのですが…

なんと、酔って帰ってきたお父さんが玄関で寝てしまっても、冷たくないように、畳の上で布団で寝かせてあげたいとの依頼でした。

なんて優しいお母さん…!

そんな一風変わった要望でも、石井さんはそのお父さんの背丈をはかって、ぴったりサイズの畳をお作りしたそうです。

これでもう酔っぱらって帰ってきても風邪ひきませんね!

今では様々な素材やデザインの畳があります。
ホームセンターでもよく見かけます。

ですが!

フィギュア用の小さな畳とか
変形した形のお部屋にもぴったりあう畳とか
椅子の座面に最適な畳
などなど…

ホームセンターではなかなか見つけられない畳でも

お客様の要望に沿った畳が作れちゃうのが
畳屋さん
なんですね!

そんな畳屋さんのなかでも
有限会社 石井畳工業さんを深堀りしていきます!


有限会社 石井畳工業

天保14年創業 畳屋 長兵衛ちょうべえ

有限会社 石井畳工業さんは
天保14年
(1843年・・・なんと江戸時代!天保といえば水野忠邦の「天保の改革」ですね。)
初代 長兵衛ちょうべえさんが
畳屋 長兵衛たたみや ちょうべえ」として開業しました。

そして、その10年後(1853年)にペリーが来航します。ペリー来航より前だなんて!!

さらに昨年は創業180周年を迎えました!!

平成元年に現在の7代目 石井淳一さんが代表となり
平成15年に法人化、今の有限会社 石井畳工業となりました。
(以下(有)石井畳工業とさせていただきます。)

(有)石井畳工業さんの看板

信頼の証 「一級畳製作技能士」

「一級畳製作技能士」とは国家資格の一つです。
都道府県が実施するもので、一級に合格する割合は4割程度。年に1回試験が行われます。

(有)石井畳工業では、職人さん全員が「一級」をもっています。

この資格には「一級」・「二級」とあり
「一級」の試験内容は、畳を製作して試験台に敷き込んだあと、ゴザの製作・取付をするというものです。
しかも すべて手縫いで!!
これらを約4時間以内に終えなければなりません。

石井さんは、はじめ12時間かかっていた手縫いの畳製作作業を
なんと 10年 かけて
3時間にまで短縮させ、みごと合格されたそうです!

実はこの資格、必須じゃないんです。
電気屋さんや建築士さんと違って、資格がなくても畳屋さんを営むことはできます。

それでも、資格があることで信頼感につながるのだと石井さんはおっしゃっていました。

資格を持つことで自分の自信やモチベーションにつながるとのこと。

(有)石井畳工業さんでは、畳の「直し」はその畳の個性に合わせて、すべて手作業で行います。
畳は一つ一つを組み合わせて、部屋にぴったり収まるように作られているので、部屋に敷きこんだ時に隙間が出ないよう、手作業で微調整しながら藁を足して、手縫いをほどこします。

この時に職人のワザと経験が活きるんですね!!

(有)石井畳工業さんでは皆さん「一級」の資格を持っているので、お互いの信頼関係が厚く作業の連携もスムーズ。
こうして出来上がった畳は隙間なく、美しい仕上がりに!

そして、お客様への満足度と信頼感へつながっていくんですね。


畳屋さんのし「熊本のいぐさ」

石井さんのイチオシ国産・熊本県のいぐさ

国産いぐさ:下が新しいもので、上が経年変化したものです。国産のいぐさは経年変化後も色むらがなく均一に飴色になります。

近年はほとんどが中国産のいぐさです。
それでもやっぱり、熊本県のいぐさは全然違う!と石井さんは言っていました。
中国産のいぐさに比べると

  • 香りがよい

  • 艶やコシがあり長持ち

  • 色の変化が美しい!  

香りや艶の正体は水分なんだとか…
いぐさは加工段階で乾燥させるのですが、国産いぐさは程よい水分を残しているため、畳となってからも艶があり、ささくれしにくい畳になるようです。

左が中国産のいぐさ 右が国産のいぐさです。
左のほうがムラがあり、ところどころ黒ずんでいます。

またその水分のおかげで、いぐさの繊維を壊さないため、空気をろ過して浄化する作用が失われず、優れているとのこと。

香りや色の変化が楽しめ、リラックス効果空気の浄化機能などもあるとのことで、この良さをもっともっと広めたいとおっしゃっていました。

いぐさは一本一本、草の中がレンコンのような繊維状になっていて、この繊維が周りの空気を吸い、クリーンにして吐き出すという機能があるので、そういったところをお伝えしていきたい。お客さんには、国産のいぐさがおすすめですよと。

いぐさについて熱く語る石井さん・・・

石井さんのポリシー

畳の縁の布を選ぶ石井さん

人と部屋に寄り添う

ただ、今はフローリングが主流ですよね。
メンテナンスのしやすさが重視されます。

わたくし、大澤家もそうです。
リビングは一面ジョイントマットとなっています。
ジョイントマット、掃除楽ちんですよね…

しかし!
そんなズボラな大澤でも扱える
メンテナンスが楽な畳が増えているんですって!
さらに、おしゃれなデザインの畳も増えているとか。

石井さん一押しは、もちろん国産いぐさを使った畳ではありますが、それよりもお客さんが望んでいるものを実現して提供したいと言っていました。

 やっぱりお客さんによっては、畳のことについてわからない方もいらっしゃると思うので、お話しながらお客さんの希望を聞き出して、一番望まれる形で提供したいと思っています。
 お客さんのご予算に合わせて、「とりあえず綺麗になればいいですよ」とか、「今回娘が出産で帰ってくるから、その時だけ綺麗なら十分」という方で、安く済ませたい方には中国産のいぐさをおすすめします。
 また高齢の方は、国産のものを望まれる方も結構いるので、ご要望に合った畳を制作します。
 ただ最近はそもそも和室が少なくて、和室があっても荷物置き場になってるというお宅があります。そういう時には「和紙やプラスチック製の畳の方がカビないし、メンテナンスがすごく楽ですよ」とお勧めします。普段共働きで自宅で過ごす時間が短いという場合も、同じようにご案内します。一方で、畳の香りを楽しみたいとかであればやっぱり天然物がいいよっていう形で、お客さんと相談しながら、その方に最適な畳を提供しています。

お部屋と人に寄り添う形で商品提案をされているんですね・・・

お客様の要望や部屋の用途、そして予算までも配慮され、丁寧に応対されているんですね。

そして・・・お客様の様々な要望に応えるべく、石井さんは日々「畳の研究」をされているそうで・・・

手縫いの作業に使用する道具たち…カッコイイ…

実験部屋・・・

なんとご自宅の一室を実験部屋にしているとか!

お客様のニーズに合う提案ができるよう、ご自宅の一室を実験部屋にして、様々な畳を敷き、経年劣化や生活上での変化などを調べているとのこと・・・。

畳によって生活の汚れが目立つものや、変色具合など、実際に生活してみないとわからない点について、石井さんの実体験を踏まえて説明できるようにしているそうです。

お客様のために徹底されています・・・!

挑戦

最近では、畳を生かした家具やインテリアの開発に取り組んでいるようです。畳に撥水加工を施したキッチン畳や座面が畳になっている椅子など。
キッチン畳については、スリッパの高さと同じ厚みに加工して、キッチンで作業する人が違和感のないように作っていました。

厚みまで計算されているなんて…!

また、今は置き畳おきだたみが人気!
置き畳であればフローリングにラグのように敷いたり、フローリングの部屋を一時的に畳部屋にすることもできたりするそうです。

置き畳のカラー畳

和室は減ってきているけれど
畳の良さを知ってもらいたいという気持ちから、日々お客様に寄り添いつつ、畳の良さを伝えられる商品の開発に力を注ぐ石井さん。

今は建具屋さんと共に畳を使った家具の製作を行っているそうです。
今度はどんな商品が生まれるのか楽しみです!

これからも石井さんの畳愛たたみあいは止まらないですね!!

おわりに・・・

今回も産業活性化コーディネーターさんを紹介させてください!

左 産業活性化コーディネーター 貴志さん  右 (有)石井畳工業 石井さん

(有)石井畳工業さんを担当されている貴志さんです。

全部で5名いらっしゃるのですが、年度内に全員紹介できるかな・・・。
紹介できるよう頑張ります!

今回も最後まで読んでくださりありがとうございます。
また次回もお楽しみに!